【No.1415】自然に寄り添ったモノづくり③

深夜0時をまわった頃、大きな木を投入し、窯の温度を一気に上げます。
焚口はものすごい熱さ!
窯の下側にある空気穴からは、火がゴーゴーと勢いよく飛び出しています。



窯の上の方からは、黒い煙がモクモクと上がります。

一見何気なく焚口で作業をしていますが、実際にこのあたりまで近づくと
かなりの温度で、10秒も耐えられないくらいです。
しかし職人さんは、窯の中のどの辺に薪を入れるかを見定めないといけないので、
窯の中をのぞき込みながら薪を投入していきます。
そのため長袖を着ていないと肌が焼けてしまうそうです。
ある職人さんは、作業中にメガネのフレームが溶けてしまったとか!



実際の作業はこんな感じ。。
この日は先輩の職人さんが、後輩の職人さんに薪を入れるタイミング等を
教えながらの作業でした。

焚口に薪を投入すると、窯の中の温度が一気に上がり、還元状態になります。
その後空気が入る事で酸化状態になり、温度が少し下がったらまた薪を投入。
これを繰り返す事で、窯の温度を徐々に上げていくのです。
物事が成長していくのと同じように、細かな上下を繰り返しながら
徐々に窯が生成発展していくようです。
焚口をじっと見ていると、火と空気の動きがよく分かります。
数秒ごとに窯に空気が入り、そしてまた火とともに勢いよく窯から熱気が吹き出る。
窯が生き物のように呼吸をしているのです。



この薪を入れる作業を数分おきに行います。
ガスや電気窯であれば、温度を設定しておけば良く、
人間の意図する事に、機械を調整すれば良いのですが、
登り窯ではそうはいきません。
あくまで自然のペースに人間が合わせながらの作業になります。
登り窯で焼かれた物がとても魅力的なのは良く分かるのですが、
ここまでして登り窯でやちむんを焼きたいと思う作り手の心境は一体どこから来るのか。。
作業をする職人さんと時間を共にしながらずっとその事を考えていました。
そして、夜が明けました。
窯焚きは次の工程に移ります。。