【No.1417】自然に寄り添ったモノづくり④
時刻は午前5時すぎ、
夜が明けて空も段々明るくなってきました。
5時間交代で番をしながら、窯焚きは休む事なく続けられています。
行程は次の段階に移りました。
これまでは、一番下の焚口に薪を入れていましたが、
ここからは焼物が入っているそれぞれの袋(部屋)に薪を入れていきます。
まずは一番目の袋から。。
それぞれの袋には小さな窓があって、そこから小さな薪を投げ入れていきます。
窓から窯の中をのぞくとこんな感じです。
ものすごい熱さと、光の強さで目が焼けそうです。
時間と窯の中の状況を見ながら薪を一斉に入れます。
薪を投入すると、窯の温度がまた上がり、燃えた薪で窯から煙が一気に上がります。
窯の横に置かれたノート。
ここに薪を入れるまでの時間が記入されています。
ちなみに、この時はおよそ5分間隔で薪を投入していました。
ずっと作業を見ていると、本当に窯と人が無言の対話をしているようです。
しかもリズムのある対話。
窯と人が、天候、湿度、気温など自然環境も考慮しながら、一定のリズムを刻んでいます。
今回、窯焚きの様子を見せていただきながら、
作り手の方々が登り窯でやちむんを焼きたいという思いはどこから来るのかを
ずっと考えていました。
確かに登り窯で焼いたやちむんには電気窯等では出せない独自の風合いがあります。
ただ、理由はそれだけではないような気がしてきました。
そもそも登り窯を建設するたけでも膨大な土地とお金が必要です。
さらに、モノづくりの作業量や商品として出せないリスクでいえば、
通常の窯と比べると何倍も違います。
僕が1つ感じたのが、登り窯のモノづくりは、より自然に寄り添うスタンスだという事です。
今回は特に、土、薪、釉薬、天候、気温、湿度・・すべてがこの土地の自然環境から
生み出されています。
ある方の言葉をふと思い出しました。
「本来、工芸はその土地の自然そのものから生まれる。
職人はその自然に手を添えてカタチにする。」
人(職人)は自然にきっかけを与える事でモノが生まれる。
まさにそんな表現がぴったりだと思いました。
今の世の中は、人が何でもコントロールしています。
そうやって「進化」してきたし、
ある意味「豊か」になってきたかもしれません。
登り窯で焼くというのは、その流れとは逆行したモノづくりです。
人の力ではコントロール仕切れない領域が増えます。
でも、このより自然に近い領域で生まれたモノ、
自然と人がぎりぎりの領域で共創したモノだからこその美しさがあります。
人間は進化するからこそ、原点回帰するという意識も本能的に働くと思います。
魅力的なモノを作りたいという職人さんの思いは、「真・善・美」の追求と、
より自然に回帰しようとするという人間の本能からきているのではと感じました。