【No.1555】「暗黒の土台に灯る、生命力の結晶」としての工芸

染色家・岡村吉右衛門氏は、1963年の『民芸手帳2月号』に寄せた「沖縄の工芸と生活 ―その歴史的背景―」の中で、こう記しています。

『悲しい歴史、苦しい生活、それは長い間沖縄の人達が負って来た暗い宿命でした。その所産である人文の歴史は暗黒の土台の上に消えることのない燈火が煌めきます。工芸の美しさは、悲しさ、苦しさ、それに畏れと云った心に深い繋がりがあるという性質を負うものと考えます。』

ここで語られている「歴史が沖縄の宿命である」という表現は、私自身、受け入れがたい思いがあります。

しかし、沖縄が歩んできた過酷な歴史が「事実」として存在し、そこから生み出された文化や工芸が、闇の中でより一層の輝きを放つ「燈火(ともしび)」となって、圧倒的な生命力を宿すに至ったことは確かだとは思います。

沖縄の工芸品は、厳しい自然環境、そこで営まれてきた人々の暮らし、そして幾多の困難を乗り越えてきた歴史の流れが、いま「この瞬間の形」として結晶化したものです。

もし、私たちの目の前にある工芸品という結晶が、類稀なる輝きを放っているとするならば。それは素材や技術の美しさはもちろんのこと、苦しい暗闇の中でも必死に生きてきた、先人たちの創造力と生命力の証なのではないでしょうか。

光の部分だけが消費され、背景にある痛みや社会の歪みが不可視化されがちな現代。 

私たちは、この「燈火」を単に消費するのではなく、沖縄の未来を切り拓くための「道標」として、次へと繋いでいきたいと考えています。