【No.1524】伝統を残すために未来を犠牲にしてはいけない

あらためて沖縄の染織について、歴史を整理しながら振り返ってみると面白い。
15世紀から19世紀後半まで、琉球王国として独立した国家だった。この約450年の間、中国(明・清)を中心に、日本、東アジアとの交易を通じて、各国から多種多様な技法を吸収して王朝文化のもとで発展してきました。



伝統、革新、伝統、革新・・・この言葉がここ最近ずっと頭をグルグル巡っています。こうやって沖縄染織の歴史を見てみると、例えば、1611年木綿の種子を取り入れる、1619年久米島に養蚕が伝わる、1690年絣の記録がはじめて登場などなど、素材や技術など革新が結構あったんだなと感じます。
そんな中、近年の転換点が1970年代後半から80年代後半に出てくる重要無形文化財指定や、伝統的工芸品の指定だったのではないでしょうか。その後の流れを見ても、この時期から業界として「伝統を守る」という流れが加速していきます。
もちろん文化財や伝産指定された事はすばらしい事だし、伝統を継承する事はとても重要だと思います。
特に沖縄戦の後、焦土の中から工芸を復活させ、それを継承されてきた方々に対して敬意を払わねばなりません。



ただ僕が1つだけ懸念しているのが、この30年くらい「伝統を守る」事にウェイトを置きすぎているのではないかという事です。それによって、現在の作り手の低収入、後継者不足、原材料不足といった大きな課題が長い間ずっと解決されていないのではないでしょうか。
世代交代がもう始まっていて、残された時間はありません。特に現状の課題について、これまでの呉服業界の流通構造が大きな原因になっている事は明らかです。なぜこんなに技術も持ち、すばらしい仕事をされている作り手の多くが月収10万円以下(5万円以下の方も普通にいます)、時給換算すると200円とか300円という状況なのでしょうか。これでは、売れれば売れるほど苦しくなります。
作り手の皆さんとお話しすると、作るのが本当に好きで、「染めたり織ったりしている時が本当に楽しい」という言葉を良く聞きます。
僕はだからこそ、作る人達がもっと収入の事を考えなければいけないと思います。そして、適正な収入があり、安心してモノづくりができる仕組みを多種多様な人々が集まって構築する必要があると思います。
もう待ったなしで伝統や思いなど守るべきコトを業界として再確認した上で、変革の具体的アクションを起こす時です。
今のままだと、伝統を守るために未来が犠牲になっていると言っても過言ではありません。残すべき伝統を未来に繋ぎ、次の発展のための「変革」です。