【No.1528】工芸ブームを考える

この4,5年は工芸品が注目されて、とても良く売れていますね。沖縄の工芸も全然供給が間に合っていない状況で、まさに工芸ブーム真っ盛りといった感じです。僕も20年この業界にいますが、こんなに工芸が注目され、全国的に売れた事は無かったと思います(バブルの時はもっとすごかったのではないかと想像しますが僕はバブルを経験していないので詳しくは分かりません・・)。



2001年後半ごろから始まった「沖縄ブーム」の時もそうでした。「沖縄」とつくものは何でも売れ、沖縄物産、沖縄料理店がどんどん県外にオープンしました。
ただ確実に言える事が、ブームは必ず終わります。
沖縄ブームも2004年ごろには収束していきました。その頃の業界の荒れっぷりもすごかった! お店はどんどん閉店し、支払いの遅延、倒産もあちこちでありました。
ブームの特徴をいくつかあげるとこんな感じでしょうか。
・何となく売れていく(売る努力以上の売れ行きがある)
・新たな参入者がどんどん出てくる
・ブームが終わる時は一気に収束する

今の工芸ブームと沖縄ブームは状況がとても良く似ています。メディアもどんどん紹介してくれるので、自らの売る努力以上にモノが売れていきます。そして、今まで販売、製造していなかった販売者やメーカーが業界にやってきて商売を始めるので、売れ行きに拍車がかかっていきます。
ここで問題なのが、この新規参入者の中に必ず市場を荒らす者が出てくるという事です。分かりやすく言うと、質の低下や価格破壊等です。特に「今この市場は元気がいいから一儲けしようという!」ノリで入ってくる人達がやっかいです。
僕は沖縄ブームの時にノリで入ってくる人達をたくさん見てきたので、話をするとそういった人はすぐに分かります。なるべくこういった人や企業とは付き合いたくないです。
そして、ブームが終わる時は一気に収束します。沖縄ブームの時もそうでしたが、「あれ?何か売れ行き鈍ったかな??」と思ったらあっという間でした。
ブームが終わるとノリで新規参入した人や企業は去っていき、荒らされた市場が残るという事になります。ノリで参入した人や企業は、また次の市場へ移動すれば良いのですが、これからもずっとこの市場で商売をしていく人や企業もいるわけです。
今の工芸ブームも企業、個人含めてかなりの新規参入がありますが、その新規出店等も昨年のはじめには一段落した感じです。さらに、日本の工芸を扱っていた先駆け的なブランド、新規参入のアパレル企業が立ち上げたブランドが閉鎖するなど、収束の前兆はもう出ていると思います。あとは東京オリンピック前後が大きな山場でしょうか。
ブームの悪い部分ばかり書いてしまいましたが、僕はブームが完全悪いとは思っていません。ただブームとどう関わるのかによって、うまくブームを活かして成長できる事もあれば、変に巻き込まれて負の遺産を背負ってしまう事にもなります。
何はともあれ、ブームの後も一定の市場は残るので、売れている今のうちに次の展開を考えておかなければならないですね。特に沖縄の工芸は、売れていても作り手の収入は厳しい状況なので、これからの工房運営の計画を立てておく必要があると思います。
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ゆいまーる沖縄では、沖縄型工房運営のセミナーを1月も開催します。業界の現状や今後の見通しについて。そして工房運営を今後どうしていくべきなのかをお伝えしたいと思います。