【No.1531】 6.23 慰霊の日にあらためて考える

昨日は6月23日、沖縄慰霊の日でした。
ゆいまーる沖縄は2009年から6月23日を会社休業日として、糸満市にある魂魄の塔やガマなどを訪問しています。今年は土曜日という事もあり、スタッフそれぞれで慰霊の日を過ごしてもらう事にしました。



僕は家族で糸満市にある平和祈念公園へ、、朝早くから沢山の方々が祈りを捧げていました。



僕はこの日にいつも同じ事を思います。
それは、「戦争の悲惨さ」だけでなく、「この悲惨な戦争がなぜ起こるのか」、「なぜ戦争は繰り返されるのか」を知ること。その上で自分達は今をどう生き、未来へこの平和を繋いでけるのかということです。
約1年前、2017年6月4日の琉球新報に『続・百年の愚行』という本の書評を書かせてもらいました。
今の世の中を見ると、今が良ければ、自分さえ良ければ、といった風潮が強く、未来や他者に対しての想像力が希薄になっていると感じます。
戦後73年が経過し、戦争体験者がどんどん減っていく中で、私たちには、他者や時間軸に対する想像力が求められているのではないでしょうか。



つながりをとりもどそう

「愚行」とは、文字通りおろかな行為のことである。この本には、戦争、弾圧、貧困、環境破壊、核、原発といった世界中で起きている愚行の数々が紹介されており、これら愚行を招いた要因が、資本主義の「速度と効率の追求」、「他者への想像力の欠如」、そして「他者の、ときに自らの記憶の破壊と忘却」であると書かれている。
 本来、資本主義はより良い社会を築くための仕組みであったはずであるが、人間によるあくなき欲望の追求の結果、世界中で様々なひずみが発生している。沖縄は、第二次大戦時に地上戦を経験し、現在も米軍基地の過重な負担を強いられており、戦争という愚行の影響を受け続けている地域のひとつである。私はちょうど20年前に沖縄で暮らしはじめたが、沖縄に集中する米軍基地の現状を目の当たりにし、基地や戦争について今まで以上に考えるようになった。
 戦争については、そもそも「戦争がなぜ起きるのか?」という背景を知る事が重要だが、その1つは現代資本主義の構造にあると思う。世界的な人口増加、エネルギー問題、富の集中と格差の拡大など、資本主義は行き詰まり感をみせているが、それでも過度な経済成長を追い続ける。ひとたび戦争が起きれば、軍需産業によって利潤を得る人や企業が存在し、私たちの暮らしにも影響を与える。
戦争によって遠い地域で苦しむ人々の様子をテレビや雑誌、ネットを通じて観る時、戦争の悲惨さや残酷さは感じても、戦争と自分達の暮らしの関係性については、想像力が働いていない事が多い。私はそのような状況を見て、経済はグローバルにつながっているが、人々の心は分断されているように思えてならない。
遠い地域で暮らす人々、さらに子や孫の世代といった未来の人々に思いをはせ、想像力を働かせる行為は、「今後どのように豊かになっていけば良いのか」を考えるきっかけになる。これまでのような金と物が中心の豊かさではなく、心をベースとした豊かさへの価値転換が求められている。
 ご存じの通り、沖縄には「ゆいまーる」という言葉があり、かつては親族や集落の人々が集まり、農作業など労働交換の時にこの言葉が使われていた。今でも助け合いや、つながり、共同体といった意味合いで、沖縄の人々に受け継がれている。
 沖縄では、このような人々とのつながり、そして自然や祖先とのつながりを大切にしている。この「つながり」は、自分は生かされているという価値観にも通じる重要なキーワードである。
 世界で起きている愚行を少しでも減らしていくためには、自然、地域、人々がつながりを取り戻していく事が必要である。そのために、沖縄は本来持っている心をベースとした豊かさを発信する重要な役割を担っている地域である。
(鈴木修司・ゆいまーる沖縄代表取締役社長)