【No.1525】染織では本当に食べていけないのか?
現在、沖縄の染織業界の「低収入」・「後継者不足」といった問題の解決に向けたプロジェクトで色々な産地を巡っています。先週は、久米島、大阪、愛知有松、山梨富士吉田へ。
最近、生産者とお話して感じるのが、特に沖縄のような手染め・手織りで生産をしていると、「そもそも染織で食べていくことはできない」と思い込んでしまっている方が多いのではないか? という事です。実際に30年以上織物をしている方から「織物だけで食べていけると思ったことがない」という声も聞きました。
確かに2008年の調査資料をみると、沖縄の染織組合員で年間100万円以下の収入の生産者が61.7%。さらに、年間50万円以下の収入の生産者が全体の40.3%もいるなど、生業としては成り立たっていない状況です。
収入の事を考えると、今では染織以外でも仕事を選択できる時代です。現在染織に携わっている方々は、年金をもらっている、家族で他にメインの収入を得ている人がいる、といった生業としてのモノづくりではないスタイルが多くなっているようです。
そうなると、副業的なモノづくり、ダブルワークをしなければならない事が当たり前になってしまい、業界全体としてこの状況を打破し、生業としてのモノづくりにしていこう考えやアクションがなくなってしまいます。こうなってしまうと生業的なモノづくりを目指す若手がいなくなってしまうのは当然です。
僕は、生業、副業、もしくはアート系・・・モノづくりのスタイルはいくつかあって良いと思いますが、あくまで産地としてのベースは生業としてのモノづくりだと思います。
沖縄もかつては生業として染織をしている方は多くいましたが、時代の流れや呉服の流通構造の硬直化により厳しくなってしまいました。しかし、呉服の流通構造を調べてみると、新たな取り組みによって変化を起こす事は可能だと思います(どうすれば良いかはまた別の機会に書きます)。
ただ、変化を起こすためには、まず生産者自身の意識を変えていく事が必要です。さらに多様な人や組織と連携しながら業界に変化を起こしていく。そうする事で、染織でも生業としてやっていける!後継者も増えていく!という流れになっていくはずです。